大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(く)16号 判決

被告人 坂本竹男

〔抄 録〕

一件記録並びに当裁判所の事実調べの結果によれば、被告人は、昭和五一年二月二一日土肥伸行らと共謀による詐欺被告事件(東京地方裁判所同年(刑わ)第六一七号)、同年三月一六日同人らと共謀による詐欺被告事件(同裁判所同年(刑わ)第一、〇三七号)、同月一七日同人らと共謀による詐欺被告事件(同裁判所同年(刑わ)第一、〇六四号)について同裁判所にそれぞれ公訴を提起されたこと、同裁判所刑事第一二部裁判長裁判官金隆史及び裁判官松本信弘ほか一名の裁判官は、右各被告事件につき審理を担当し、同年六月一〇日右各被告事件を被告人の共犯者とされる和泉盛繁らの詐欺被告事件(同裁判所同年(刑わ)第六一六号)と併合して審理する旨決定したこと、被告人は、膀胱腫瘍等の手術のため同年三月二二日東京警察病院に入院し、同年七月二七日の第一回公判期日及び同年九月二日の第三回(ただし、被告人にとっては第二回)公判期日にそれぞれ出頭できなかったこと、同年九月三〇日右病院を退院後も通院加療を受けていたこと、裁判長裁判官金隆史及び裁判官松本信弘ほか一名の裁判官をもって構成する原裁判所は、右第三回公判期日において和泉盛繁らに対する詐欺被告事件から被告人に対する詐欺被告事件を分離し、昭和五二年三月九日和泉盛繁らに対する詐欺被告事件につき被告人らと共謀にかかる公訴事実につき有罪の判決をしたこと、原審は、昭和五三年一月一九日被告人に対し第四回(被告人にとっては第三回)公判期日を指定し、同期日に被告人及び弁護人は出頭し直ちに所論の理由により忌避申立をしたこと、裁判長裁判官金隆史及び裁判官松本信弘ほか一名をもって構成する原裁判所は、右公判期日において、右忌避申立は訴訟を遅延させる目的のみでなされたことが明らかである、との理由で刑訴法二四条により却下する旨原決定をしたこと、被告人及び弁護人は、昭和五三年一月二三日原決定を不服として本件即時抗告の申立をしたこと、被告人は、右第四回公判期日当時月二回通院加療中であったことが認められる。

そこで、まず、共犯者に対して有罪判決をした裁判官と忌避原因について検討すると、裁判官が共犯者に対して被告人との共謀にかかる公訴事実につき有罪の判決をしたことだけでは、被告人に対する右公訴事実について審判するにあたって、忌避原因とならないとすることは、つとに最高裁判所の判例として確定したところである(最高裁判所昭和三六年六月一四日第一小法廷決定、最刑集一五―六―九七四参照。従って、所論引用の高松高等裁判所判例は変更されたものである。)から、申立人らの主張する裁判長裁判官金隆史及び裁判官松本信弘に対する忌避原因が刑訴法二一条一項後段の忌避原因に該当しないことは、明らかである。そこで、更にすすんで、この意味において明らかに忌避原因に該当しない事由を理由とする忌避の申立を同法二四条により簡易却下することの当否について検討すると、右のごとき忌避申立は、認容の可能性は全く存しないものであって、それによって、もたらされる結果は、訴訟遅延のみを招くに帰し、それ故にかかる忌避申立は、訴訟の遅延のみを目的とするるものと解して毫も差支えないものというべきである(最高裁判所昭和四八年一〇月八日第一小法廷決定、最刑集二七―九―一四一五参照。)されば本件忌避申立の事由がそれ自体理由のないこと明らかであることに加えて、被告人に対する原審の審理経過、審理期間及び被告人の病状等が訴訟の進行に堪え難いものとは認められないこと等に照らし、本件忌避申立は、訴訟遅延のみを目的とするものとして原審が刑訴法二四条一項によりこれを却下したことは相当であったというべきである。従って原決定には所論のような違法不当のかどは存しない。

(谷口 金子 小林)

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